「月明かりの神社と血の呪い」

夜の深い闇に包まれた神社。
そこは、古びた木々に囲まれており、月明かりもほとんど届かない静かな場所だった。
この神社には、代々受け継がれてきた巫女が住んでいた。

彼女の名は美香。
美香は、清らかな心を持つ優しい巫だったが、彼女の周りには常に不気味な噂が立っていた。
人々の話によれば、美香は悪霊を鎮める力があると同時に、血の力を引き寄せる存在であるというのだ。
最近、神社の近くで不幸な事故が相次ぎ、その噂はより強くなった。

美香は毎日神社に訪れる信者たちを心から迎え入れていたが、内心では彼女が持つ「血」の力に怯えていた。
彼女の力は、何らかの形で彼女自身を苦しめていると感じていたからだ。
彼女は、自らの力を封じ込めようと、毎晩夜遅くまで参拝者のために祈りを捧げていた。

そんなある晩、神社の境内に一人の青年、直樹が現れた。
彼は美香の美しい姿に惹かれ、すぐに神社に通い詰めるようになった。
美香も直樹に惹かれることがあったが、自分の力が彼に何かをもたらすのではないかと恐れ、彼との距離を保とうとした。

「美香さん、なぜ私と話してくれないのですか?」と直樹が問いかけた。
「ただの巫女としてではなく、あなた自身を知りたいのです。」

美香は答えられず、心の中で葛藤した。
彼女は自らの血の力が、直樹に不幸をもたらすかもしれないと考えた。
その夜、美香は夢の中で先代の巫女たちと出会った。
彼女たちは、美香が自らの力を受け入れなければ、呪いが彼女自身に返ってくると警告した。
目が覚めた美香は、悲しい表情を浮かべながらも決心した。

ある晩、直樹は美香に告白する。
「君の力を受け入れたい。君が何を恐れているのかはわからないけれど、君の側で支えたい。」

美香はその言葉を聞いた瞬間、思わず彼に掴みかかった。
「私があなたに近づくと、血が流れるかもしれない…!」

その瞬間、神社の空気が一変した。
強い風が吹き抜け、神社の周りに混沌とした霊が集まってきた。
美香は逃げたかったが、直樹は彼女をその場に留まらせていた。
彼は一歩踏み出し、「私も一緒に戦う!」と言った。

驚くべきことに、直樹の言葉で美香の血の力が目覚めた。
彼女は自らの過去から逃げるのではなく、全てを受け入れることに決めた。
美香は直樹の手を握り、心の底から祈りを捧げた。
二人は、互いに流れる血の力を結集させ、霊たちを払うことに成功した。

その夜、神社は再び静けさを取り戻した。
美香と直樹は、お互いの手を握りしめていた。
二人の心の中には、もはや恐れはなく、むしろ強い信頼と絆が芽生えていた。
しかし、美香は自らの力を完全に受け入れたわけではなかった。
彼女は、この力を何かの目的に使える日が来ることを願っていた。

日が経つごとに、彼女の周りでは不幸な出来事は減っていったが、美香の心の奥底には、まだ血の力が渦巻いていた。
彼女は、直樹と共にその力の意味を見つけ出す旅に出ることを心に決めていた。

タイトルとURLをコピーしました