ある古い神社の奥に、誰も近づかぬ扉があった。
その扉は、神に身を捧げる者たちが厳重に封印した場所であり、通称「禁断の扉」と呼ばれていた。
村では代々その扉についての噂が語り継がれ、決して開けてはいけない、という警告がなされていた。
しかし、好奇心旺盛な青年、健二は、禁忌を冒すことに決めた。
ある夜、月明かりの下、健二は仲間の静香と裕樹を連れて神社に向かった。
彼らは神社にまつられた神の力に興味を抱き、昔話に出てくる「真実」を知りたいと思っていた。
扉の前に立つと、重厚な木製の扉には「限界を知る者のみ、真実を求めよ」と書かれた文字があった。
ヒュウヒュウと冷たい風が吹く中、健二はその文字を見つめながら心が高鳴っていくのを感じていた。
「開けるべきじゃないって…」と静香は躊躇った。
しかし、健二は「この扉の先には、神の真実がある。俺たちで探ってみよう!」と、興奮の色を隠せなかった。
裕樹は仕方なく同意し、3人は力を合わせて扉を押した。
ドンと音を立てて、扉はゆっくりと開き始めた。
中から漂ってきた冷気に、静香は思わず身震いした。
しかし健二は一歩踏み出し、扉の奥へと進んでいった。
暗闇の中、彼らの目に飛び込んできたのは異様な光景だった。
扉の向こうには、無数の神々の像が並び、彼らの目がこちらを見下ろしている。
しかし、その表情はどれも無表情で、何か不気味なものを感じさせた。
「これが神の真実なのか…」と、健二は少し戸惑いを見せたが、興奮は収まらなかった。
静香と裕樹も、その異様な空間に呑まれそうになりながらも、健二について行った。
進むにつれ、その場の雰囲気が一変していく。
突然、暗い空間から不穏な声が聞こえ始めた。
「お前たちは、何故ここに来たのか…」
その声は響くように、三人の心に直接語りかけてきた。
健二は怯えながらも、「真実を求めて…」と答えた。
「真実が欲しいのか。だが、お前たちにはそれを知る資格がない。暴にしてはならぬことを、心得よ。」
その言葉と同時に、空間が歪み始め、凄まじい圧力が三人に襲いかかった。
目の前に立っていた神々の像が、一瞬にして変わり果て、異形のものへと姿を変えた。
口から暴力的な喧騒が渦巻き、彼らの心に直接的に訴えかけてくる。
恐怖が押し寄せ、静香は「出よう、戻ろう!」と叫んだ。
けれども健二はその場に立ち尽くしていた。
「恐れを乗り越えてこそ、真実を知ることができる」と、何かに取り憑かれたような表情で呟いた。
「だけど…」と裕樹は言いかけた。
その瞬間、空間がさらに崩れ、彼らはバラバラに引き裂かれる感覚に襲われた。
暗闇の中で、静香の悲鳴がかすかに聞こえ、裕樹の姿も見えなくなっていた。
恐怖と混乱の中で、健二は扉のそばに立ち、逃げ出すべきか、真実を追求すべきかの間で揺れ動いていた。
「お前は暴力を求めているのか。それとも、自らの心の限界を知る者なのか。」神からの問いかけに、彼は答えを見つけられなかった。
ただその瞬間、彼の心に広がった恐怖は、まるで彼自身の心の中に根付いているかのようだった。
彼は自らの選択がどのような結果をもたらすのか、全く想像できなかった。
彼の心の奥底にある「限界」が押し寄せ、思わず扉の方に進み始めた。
しかし、その扉は既に閉じてしまっていた。
途方に暮れ、彼は一人きりの空間に取り残されてしまった。
すべてが崩れ去った時、健二は我に返り、ようやく現実を認識した。
しかし、その代償として受け取ったものは、全てを失ってしまった後の心の闇だった。
彼は永遠に、暴に虜になったままでいることを悟った。