切り裂かれた心の扉

田中少年は、町外れの古びた廃屋に興味を持っていた。
その家は、誰も近づかない禁忌の場所として知られ、特に子供たちの間では恐れられている存在だった。
噂によれば、かつてそこに住んでいた住人は呪いをかけられ、異界に引きずり込まれたという。

ある日の放課後、好奇心に駆られた少年はその廃屋に足を運んだ。
日が沈むにつれ、彼の意気込みは薄れつつあったが、興味が勝り、ドアをぎいっと押し開けた。
屋内は薄暗く、ほこりが舞っていた。
周りには古い家具や、破れた壁紙が残るだけだったが、彼の目を引いたのは一冊の古びた本だった。

本の表紙には「呪の書」と書かれ、無造作に床に置かれていた。
田中少年はそのまま本を手に取り、ページをめくり始めた。
その瞬間、背筋が凍るような冷気が彼を包み込む。
何かがおかしい。
しかし、彼はその不安を振り払うように、本を読み続けた。

ページの中には、さまざまな呪文や儀式が記されており、特に「切り裂きの儀」についての説明が目に留まった。
その儀式は、他の世界に繋がる扉を開くものだと書かれていた。
少年は興奮し、好奇心からその儀式を試してみることに決めた。

必要なものは、古い鏡と何か鋭利なもので自分の指を切ること、そして、特定の言葉を唱えることだった。
近くにあった破れた鏡を探し出し、刃物で指を軽く切り、血を鏡に塗りつけた。
緊張しながら言葉を唱えた瞬間、鏡が赤く光り、異様な現象が彼の前で展開された。

鏡の中に異界の住人が映り込み、彼をじっと見つめていた。
その姿はぼんやりとして人間の形を持っているが、目は底なしの闇のようで、心の奥に寒気を催させる。
不安を覚えた田中少年は、そのまま儀式を終わらせたが、鏡の中の住人は消えることなく、彼をじっと見つめ続けた。

次の日、彼は学校に行くも心が落ち着かなかった。
普段通りに振る舞おうとしたが、友達との会話が上の空になっていた。
そんな中、彼の元に一通の手紙が届く。
それは、友人の佐藤からで、「君があの廃屋に行ったって聞いたけど、大丈夫?」と心配する内容だった。
手紙を読みながら、田中少年は何か不気味な警告を感じ取った。

その夜、再び廃屋に行くことにした。
彼は異界の住人に何かを求めているように思えたからだ。
廃屋は一層不気味な雰囲気に包まれていた。
田中少年は再び鏡の前に立ち、以前に行った儀式を繰り返すことにした。
しかし、彼が言葉を唱えると、鏡がひび割れ始め、異界の住人が鏡を通り抜けてきた。

彼の心は恐怖でいっぱいだった。
しかし、その瞬間、住人の声が彼の頭の中に響いた。
「切り裂きの儀はお前の心を切り裂くためのもの。私が来たということは、お前の選択の結果だ。」一気に彼の意識が引きずり込まれ、周囲の景色が変わっていくのを感じた。

異界の住人がどういう存在かを知った時、田中少年は後悔に苔むした。
彼は今、異界の扉に囚われ、かつての自分を切り裂かれながら、永遠に苦しむ運命にあった。
友人たちが彼を心配し、彼を助けるためにやってくることは決してないだろう。
彼の意識は、もう二度とこの世界に戻れないことを知った。

タイトルとURLをコピーしました