ある寒い冬の夜、静まり返った田舎の村に、若い男女の友人たちが集まった。
村には、代々伝わる不気味な噂があった。
それは「夜には決して話してはいけないことがある」というものだった。
好奇心旺盛な太郎と花子は、その噂を耳にして興味をそそられた。
彼らは自分たちの関係を深めるために、仲間たちを招いて一緒に話をすることにした。
夜の帳が下り、外は雪が降りしきる中、合宿所の一室に集まった彼らは、すぐに怪談を語り合うことになった。
次々と語り手が変わる中、太郎は自分が聞いた話を語り始めた。
彼が小さい頃に、村の外れにある古びた神社について聞いた話だった。
「その神社には、夜に一度だけ姿を現す怪物がいるんだって。それは、村の人々が追い払った女性の霊だと言われている。彼女は生前、村の男たちに裏切られて、ひどく恨んでいたらしい。そして彼女は、月が満ちた夜、神社の近くに現れて人を探し回るんだ。」
太郎の語りに、部屋の空気が一瞬凍りついた。
仲間たちは興味津々で話を聞き入っていたが、同時に不安そうな表情も浮かんでいた。
花子は話の最後にこう付け加えた。
「本当にその霊に出会ったら、どうなるのかな?」他の友人たちもその問いに戸惑い、考え込んでしまう。
黙ってしまった彼らに我慢できず、次は健太が自分の話を始めた。
「私の親戚が、神社の近くに住んでいて、ある晩、子供の泣き声が聞こえてきたって。泣き声は神社から聞こえてきたらしい。」彼は続けて話した。
「その親戚は、すぐに様子を見に行ったが、周りには誰もいなかった。それでも聞こえる泣き声は次第に大きくなり、耐えきれなくなった親戚は逃げ帰ったんだって。」
彼らはその話にますます緊張を強め、部屋の中が冷たい空気に包まれていった。
この時、外からかすかに風の音が聞こえ、木々がざわめくのがわかった。
花子は思わず振り返り、窓の外を窺った。
「なんだか寒くなってきたね…」
太郎はその小さな緊張感を打破するために、もう少し軽い話をしようと考えたが、次の瞬間、彼のスマートフォンが突然鳴り出した。
電話の着信音は、村の昔話を歌ったメロディーだった。
彼が画面を見ると、番号は「非通知」と表示されていた。
彼は恐る恐る電話を取った。
「もしもし?」と声を発すると、電話の向こうからかすかな女性の声が聞こえた。
「お願い、助けて…」その声は翳りを帯び、太郎の心に恐怖を植え付けた。
彼は声を発することができず、ただ電話を切った。
その瞬間、周囲にいた皆が重い空気を感じ取った。
花子は恐怖に顔を青ざめ、「太郎、今の…誰だったの?」と尋ねた。
太郎は何も言えずにただ震えていた。
彼らはすぐにでもその場から逃げ出したい気持ちを抱えながらも、扉が閉まった方向に目を向けた。
突然、部屋の窓が強風に煽られ、一瞬のうちに開いた。
そして外から雪のようなものが舞い込み、「お願い、助けて…」と同じ声が室内を満たした。
目の前には誰もいなかったが、その声は確かに彼らの耳に響き、思わず全員が息を呑んだ。
恐怖から逃げられない彼らは、どうすることもできずに窓を閉めようとしたが、その瞬間、急に全ての電気が消え、暗闇に包まれた。
暗闇の中で、太郎は誰かが自分の腕を掴む感触を感じた。
彼は思わず叫び声を上げた。
「誰だ!」と叫んだ瞬間、すべての音が消えたように感じた。
しかし、その時、彼の耳元で再び「お願い、助けて…」という声がはっきりと聞こえた。
それは彼が恐れ続けていた「夜に話してはいけないこと」だった。
不気味な静けさの中、彼らの心に脅威が迫り、ひたすらその場から逃げ出すしかなかった。
窓から逃げるように外に飛び出すと、雪が降りしきる闇の中、彼らは絶望的に村の外へと逃げ続けた。
彼らの心には、決して忘れることのできない夜の恐怖が深く刻まれたのだった。