ある秋の夜、俊介は大学の友人と一緒に山奥のキャンプ場へ向かった。
彼は友人たちと過ごすこの時間を楽しみにしていたが、心の中には、常に気がかりなことがあった。
最近、彼は「り」についての噂を耳にしていた。
深い山の奥には、人知れず呪われた村が存在し、そこでは「様」という霊が出没すると言われていた。
「俊介、お前本気で行くつもりなのか?」友人の祐樹が心配そうに尋ねた。
「うん、みんなで行けば安心だろう」俊介は強がりながら答えた。
実は、彼はその村を知りたくてたまらなかったのだ。
噂の真相を確かめることで、彼自身の心の中にある不安を解消したかった。
キャンプ場に到着すると、夜空には無数の星が輝いていた。
友人たちと焚き火を囲み、賑やかな時間を過ごしながらも、俊介の心はその村のことに向いていた。
やがて、薄暗くなった頃、彼は興が乗ったようにその村の話を切り出した。
「おい、あの呪われた村行ってみようぜ!」
「冗談だろ?」と、友人たちは一斉に彼を冷ややかな目で見た。
しかし、俊介は決意を固めていた。
「本当に行くって言ってるんだから、あとはお前たちに付いてきてほしい」と言った。
友人たちは最初は反対したものの、彼の熱意に押されて、一緒に行くことになった。
懐中電灯を片手に、彼らは村の方へと進み始めた。
周囲の静寂に不安が募る。
村は一向に姿を現さなかったが、俊介は自分が真実を求める勇気を持っていることを感じていた。
森が薄暗くなり、静まり返った時、突然、彼らの目の前に朽ち果てた家が現れた。
それはまさに「呪われた村」そのもので、木々が甦るように絡みつき、まるでその家が生き物のように見えた。
俊介は興奮し、友人たちを促して中に入った。
中は異様な雰囲気が漂っていた。
時代遅れの家具や、埃だらけの壁、そしてどこかから聞こえるかすかな囁き声。
「様」の存在を確かめるため、俊介はまるで引き寄せられるように奥へ進んだ。
廊下の終わりには、古びた鏡が置かれていた。
「この鏡、何か不気味だな」と祐樹がつぶやいたが、俊介は無視して鏡の前に立った。
鏡を通して、自分の顔を見た瞬間、彼は驚愕した。
鏡の奥には、彼以外の存在が映っていたのだ。
それはどこか不気味に微笑む女性で、彼をじっと見つめていた。
「あなたは私を見つけに来たのね」と女性の声が響いた。
俊介は恐れと驚きで動けなくなった。
彼女の目から溢れ出すのは、何か不吉な運命をつかさどるような瞳だった。
「私の呪いを解いてほしいのか?」
その瞬間、彼の心に「真実」への欲求が湧き上がった。
俊介は恐怖に駆られながらも、その女の子に答えた。
「解くって、どうすればいいんだ?」
「あなたの心の奥に潜む恐怖を、私に見せて…私を受け入れるのよ」と彼女は微笑んだ。
俊介は抵抗感が募るも、その言葉に乗って、自分の内面をさらけ出す決意をした。
彼の心には、孤独や不安、そして友人との繋がりの大切さが隠れていた。
「私は友人たちを大切に思っている。でも、不安に駆られることも多い…」とのぎこちない言葉が紡がれたとき、ふっと周囲が明るくなった。
そして、彼の周りの温もりが感じられ、彼の心の奥底から恐れが少しずつ解き放たれていった。
「そう、それがよい…私に何かを教えてくれたのね」と彼女は満足そうにうなずいた。
その瞬間、俊介の背後に立っていた友人たちの姿が、彼の視界に戻った。
彼らもまた、彼の心の中に潜んでいた恐れを理解したようだった。
振り返ると、彼らの目には微かに柔らかな光が宿っていた。
俊介は友人たちの存在が何よりも大切であることを理解した。
彼は、恐れを乗り越えたことで、真実を掴むことができたのだ。
その後、俊介は村を後にし、キャンプ場に戻った。
彼の心には「様」と呪われた村での出来事が深く刻まれ、彼は再び友人たちとの絆を大切にすることを誓った。